欧米では、修辞学は紀元前五世紀以来の歴史があって、たとえば、ラオスベルクの著作は三百を超える数の文彩を収録している(1)。しかしながら、この史上最大の修辞学書では、古代ギリシア語とラテン語の例示が中心になっていて、たまに出てくるフランス語文献からの引用もほとんど古典主義期の韻文である。多くの読者にとって、これらの例はわずらわしいばかりで、効率的ではない。
修辞法の数が多くなれば、大別と細分の必要が出てくる。こうして過去をふりかえると、修辞学書にはその数だけの分類がある。「文彩の新たな分類を考えることはまだ可能である。そして、実のところ、修辞学に関心を持っていて、今度は自分が、自分流に、文彩を分類しようという気にならないような者は一人もいないといってもいいのだ。」理想の分類はバルトが模索したような「主要な文彩の純粋に操作的な分類」であろうが、これは彼が言うように「多分、作ることができない」(2)。
既成の分類法をみてみよう。修辞法を大きくふたつに分けるとすれば、ソシュール以来の二分法、つまり、形式と内容に分ける方法がすぐに思い浮かぶ。こうして、金田一春彦編の『日本語百科大辞典』では、次のような二分法がとられている。「主として言語記号の形式的(物理的)側面にかかわる修辞法と、主として言語記号の内容的(意味的)側面にかかわる修辞法がある。両者にまたがるものもあるが、基本的な性格が前者であるものを「韻律」の項において、後者であるものを「措辞」の項において扱う」(3) 。措辞とは表現法elocutioのことであり、転義法tropeのことであり、結局は、文彩figureのことである。われわれの修辞法に直接関係しているのは、B.措辞の1現代文の箇所(傍線筆者)である。これは、膨大な古典修辞学の遺産からすれば、あまりにも貧弱な下位区分であるといわざるを得ない。
「A韻律 1韻:1)頭韻2)脚韻
2音律:1)律読法2)七五調3)七七調4)五七調5)破調6)語割れ7)切れ字
B措辞 1現代文:1)比喩2)擬人法3)引喩4)対比5)対句6)反復7)倒置法8)逆説
2古典:1)縁語2)掛詞3)枕詞4)序歌5)本歌取り6)引歌7)故事8)有職9)季語」
五十嵐は修辞法のあるタイプと他のあるタイプとを表裏一体のものとして考えることによって、表の正道と裏の権道に大別する(4)。速見博司は『近代日本修辞学史』(有朋堂1988)の中で、この分け方に感心した(5)。しかし、今となっては、表裏の分類は無意味である。この五十嵐の著作を現代的な定義と例とに置き換えた中村のものは展開のレトリックと伝達のレトリックに二分する(6)。これもしかし、この二種に分ける積極的な理由が見つからない。では現前の隠喩と不在の隠喩のように、修辞法を成立させている目立つ要素と目立たせる要素(文脈)とが共に隣接して存在しているかどうかで分けるのはどうだろうか。それを成立させているのが、暗黙の言語規範であったり、文学の知識であったりする場合には、今度は個人差というやっかいな問題が出てくるからである。あるいは効率的な発想から判断すると、単一直喩と拡充直喩のように、長いか短いかによって、短いものを優先する。デカルトのように単純なものから複雑なものへ進む。筆者の二分法はこのようなものである(7)。
三種の分類はどうだろう。三位一体を好むフォンタニエの細分は隠喩と換喩と提喩を軸として、多くの三つ組をその著作に与えている(8)。彼は転義か転義でないかをまず区別する。しかし、その間に、転義のようで転義でない疑似転義のタイプを設けている。それは、濫喩catachr峻eのケースである。兼用法syllepseにも、濫喩catachr峻eにも、換喩的・提喩的・隠喩的の区別があり、他の転義(文彩)と称するものについても、虚構表現・反映表現・対立表現の区別がある。さらに、転義でない文彩と称するものについても、変動構文・充溢構文・含意構文の区別がある。細分にはいいが、大別となると、問題がある。こじつけるのであれば、すべての修辞法を、隠喩的か換喩的か提喩的かのどれかにあてはめることは可能であろう。しかし、近代的な見直しによって、今では、転義法として認められているのは、隠喩と換喩と提喩だけである。グループμの『一般修辞学』では、すべての修辞法に提喩的解釈が与えられていたし、ヤーコブソンを待つまでもなく隠喩と換喩は、現代では、比喩的な解釈によってかなりの学問的な広がりを与えられている。
A 転義tropes
【交換転義】 換喩m師onymie 原因の換喩 道具の換喩 結果の換喩 容器の換喩 場所の換喩 記号の換喩 肉体の換喩 主人の換喩 物体の換喩
【関係転義】 提喩synecdoque 部分の提喩 全体の提喩 物質の提喩 数の提喩 類の提喩 種の提喩 抽象的提喩 個人的提喩=換称antonomase
【類似転義】 隠喩m師aphore
【混合転義】 兼用法syllepse 換喩的兼用法 提喩的兼用法 隠喩的兼用法
【虚構表現の文彩】 擬人法personnification 諷喩all使orie 擬物法subjectification 神話法mythologisme
【反映表現の文彩】 誇張法hyperbole 暗示引用allusion 転喩m師alepse 緩叙法litote 黙説法r師icence 対義結合paradoxisme
【対立表現の文彩】 暗示看過pr師屍ition 反語法ironie 譲歩法姿itrope 偽悪的讃辞ast司sme 反語的期待contrefision
【擬似転義】 濫喩catachr峻e 換喩的濫喩 提喩的濫喩 隠喩的濫喩
B 非転義non-tropes
【変動構文の文彩】 倒置法inversion 模擬法imitation 転用法始allage
【充溢構文の文彩】 同格法apposition 冗語法pl姉nasme 虚辞法expl師ion
【含意構文の文彩】 省略法ellipse 軛語法zeugme 破格構文anacoluthe
【拡張表現法の文彩】 付加形容詞 姿ith春e 代名詞化pronomination
【演繹表現法の文彩】 反復法r姿師ition 変換法m師abole 類語反復synonymie 漸層法gradation
【結合表現法の文彩】 添加法adjonction 結合法conjonction 分離法disjonction 急分裂abruption
【音調表現法の文彩】 頭韻法allit屍ation 類音語法paronomase 異義復言antanaclase 半階音assonance 変形反復polyptote
【強調文体の文彩】 迂言法p屍iphrase 未決suspension 訂正correction
【言回し文体の文彩】 設疑法interrogation 詠嘆法exclamation 頓呼法apostrophe 中断法interruption 予撃法subjection 対話法dialogisme
【対照文体の文彩】 直喩comparaison 対照法 antith峻e 修辞的三段論法enthym士isme 挿入句法parenth峻e 感嘆的結語 姿iphon塾e
【模倣文体の文彩】 活写法hypotypose 調和法harmonisme
四種ではどうか。グループμの『一般修辞学』では、変換を基礎に据えることによってすべての修辞法を、語形変換m師aplasme・構成変換m師ataxe・語義変換m師as士塾e・論理変換m師alogismeに大別する(9)。そして、そのそれぞれについて、問題の手法が、削除であるか、附加であるか、その両方を伴うものであるか、置き換えであるかによって、彼らは記述を進めて行く。わかりやすくて合理的な分類である。問題は、最初に来る語形変換が現実には修辞法というよりも、言語学の例を提供することにしかならない、という点である。それは以下の下位区分を見ても理解できるだろう。
A 語形変換m師aplasme
【部分的削除】 語頭音省略aph屍峻e 語尾音省略apocope 語中音省略syncope 合音syn屍峻e
【全面的削除】 抹消法d四斬tion 語間空白blanchissement
【単純な附加】 語頭音添加prosth峻e 分音di屍峻e 接辞添加法affixation
語中音添加姿enth峻e かばん語mot-valise
【反復的附加】 重複redoublement 強調insistance 脚韻rime 頭韻法alliteration 半階音assonance 掛詞paronomase
【部分的削除・附加】 幼児語langage enfantin 接辞affixeの代替substitution 語呂あわせcalembour
【全面的削除・附加】 形態的基体supportのない類義語反復法synonymie
古語法archaisme 新語法n姉logie,n姉logisme 新造語forgerie 借用emprunt
【全種の置換】 音節転換contrepet アナグラムanagramme 音位転換metathese
【倒置による置換】 回文palindrome さかさま言葉verlen
B 構成変換m師ataxe
【部分的削除】 縮合法crase
【全面的削除】 省略法ellipse くびき語法zeugme 接続語省略asynd春e
並列法parataxe
【単純な附加】 挿入句parenth峻e 連鎖法concat始ation 虚辞法expl師ion
列挙法enumeration
【反復的附加】 再提示reprise 接続語重複法polysynd春e 韻律法m師rique
相称法symetrie
【部分的削除・附加】 兼用法syllepse 筋かい構文anacoluthe
【全面的削除・附加】 クラスclasseの転移transfert
【全種の置換】 分語法tm峻e 外置法hyperbate
【倒置による置換】 倒置inversion
C 語義変換m師as士塾e
【部分的削除】 提喩synecdoque・換称antonomase(一部分) 直喩comparaison
現前の隠喩m師aphore
【全面的削除】 意味素脱落法as士ie
【単純な附加】 提喩・換称(一部分) 原語彙法archilexie
【部分的削除・附加】 不在の隠喩
【全面的削除・附加】 換喩m師onymie
【否定の削除・附加】 撞着法oxymore
D 論理変換m師alogisme
【部分的削除】 緩叙法litote
【全面的削除】 黙説法r師icence中断法suspension沈黙法silence
【単純な附加】 誇張法hyperbole誇張的な沈黙法
【反復的附加】 反復法r姿師ition冗語法pl姉nasme対照法antith峻e
【部分的削除・附加】 婉曲法euph士isme
【全面的削除・附加】 寓意all使orie寓言parabole寓話fable
【否定の削除・附加】 反語ironie逆説paradoxe反用法antiphrase緩叙法litote
【置換】 論理的倒置 年代順の倒置
下のシンチンゲルの分類では、文彩Figurenは語の文彩・文の文彩・思考の文彩・音調の文彩に区分されている(10)。グループμのものに似て、単純でわかりやすい。違うのは、直喩や隠喩が筆頭に来る点である。日本では、入って行きやすい修辞法、また、用例がたやすく見つかる修辞法は、何といってもこの比喩である。だから、これらが筆頭に来るような分類は望ましい。『一般修辞学』で最初に来ていたもの(語形変換)が『現代独和辞典』では一番最後に来ている点にも、好感がもてる。ただ、納得できないのは、シンチンゲルの分類では文の構成に深くかかわる対照法や撞着語法のような基本的な修辞法が、思考の文彩(『一般修辞学』では論理変換)の中に組み入れられている点である。
A 語の文彩Wortfiguren
直喩Vergleich隠喩Metapher組成隠喩Synasthesie擬人法Prosopopoie 換喩Metonymie提喩Synekdoche換称Antonomasie引喩Allusion代換Hypallage強勢法Emphase誇張法Hyperbel曲言法Litotes 迂言法Periphrase反語法Ironie
B 文の文彩Satzfiguren
連結辞欠落Asyndeton連結辞重用Polysyndeton分肢省略Ellipseくびき語法Zeugma話中頓絶Aposiopese累積法Akkumulation拡充法Amplifikation漸層法Klimax漸降法Antiklimax平行法Parallelismus交差法Chiasmus破格構文法Anakoluth倒逆法Hysteron Proteron倒置法Inversion転置法Enallage
C 思考の文彩Gedankenfiguren
頓呼法Apostrophe 祈念の呼びかけInvokation修辞疑問rhetorische Frage対照法Antithese撞着語法Oxymoron逆説法Paradoxon濫喩Katachrese冗言法Pleonasmus
D 音調の文彩Klangfiguren
頭韻Alliteration脚韻Reim首語句反復Anapher 尾語句反復Epipher 分肢反復Diaphora首尾同語Kyklos同語反復Polyptoton隔語句反復Epanalepse前辞反復Anadiplose首尾語句反復Symplok掛けことばParonomasie 声喩Onomatopoie音声画Lautmalerei 文末律動構成Cursus
五十嵐は先の大別の後で、それらを四種ずつに細分している。『新文章講話』では、表正道は結体・増義・融会・順感の四原理に分けられ、裏権道は朧化・存余・奇警・変性の四原理に分けられている(11)。これらの命名法については、速見も書いているように、修辞学が誰よりも大衆のためにあることを考えるとき、それらはあまりにも不親切な名称である。増義や朧化や奇警のように、説明を聞かなくても、そこに組み込まれている修辞法を見ていれば、おのずとピンとくるものもあるが、やはり、それらは、わかりにくい。
詞姿figure原理八種(48項目)
1a【結体の原理】直喩法 隠喩法 諷喩法 活喩法 結晶法 問答法 挙例法 誇張法 現写法 対照法 抑揚法 換置法 括進法 列叙法 詳悉法
1b【朧化の原理】稀薄法 曲言法
2a【増義の原理】引用法 隠引法 縁装法 重義法
2b【存余の原理】挙隅法 側写法 省略法 断(接)叙法 接離法 反言法 皮肉法 設疑法 倒装法
3a【融会の原理】漸層法 飛移法 序次法 連鎖法
3b【奇警の原理】警句法 奇先法
4a【順感の原理】反復法 対偶法 避板法 擬態法 詠嘆法 情化法
4b【変性の原理】方便法 遮断法 変態法 超格法
中村明は展開のレトリックを配列・反復・付加・省略に、また伝達のレトリックを間接・置換・多重・摩擦の四種に分けている(12)。これらは、五十嵐のものに比べて、たしかに、現代的な命名になっている。しかし、よく見ると、対照法が配列の項に入っているのに、ほとんど同じ意味の対句法が反復の項に入っていたり、兼用法やくびき語法が見出しの省略の項に入っていなかったり、漸層法が配列の項にあるのに、連鎖法は反復の項に、また列叙法は付加の項に存在する。未決が配列で、ためらいが付加で、中断法が省略になっている、など、問題は残る。つまり、あまりに、欧米のレトリックの分類を無視して下位区分しているために、そちらの側から見ると、奇妙な点が目につくわけである。なお、中村は自分が、修辞学者ではなく、何よりも文体研究家であることをことわってはいる。
A展開のレトリック
1【配列】 序次法 括進法 奇先法 情報待機 未決 誤解誘導 照応法 伏線 対照法 方便法 抑揚法 漸層法 漸降法 頓降法 飛移法 降移法 昇移法 変態法 頓旋法 転折法 遮断法 折挿法 断絶法 カット・バック フラッシュ・バック 語順操作 倒置法 転置法
2【反復】 反復法 畳語法 復言法 畳句法 畳点法 ライト・モチーフ 回帰反復 間投反復 一括反復 首句反復 結句反復 首句結句反復 連鎖法 前辞反復 尻取り文反照法 首尾同語 連鎖漸層法 変形反復 同族反復 倒置反復 交差配語 交錯的配列換義 異義復言 同意反復 類語反復 トートロジー 類義累積 おうむ返し 句拍子 押韻 頭韻 脚韻 畳音法 同音集中 造句法 リズム 句読法 等長句 同形節反復 並行体 平行法 対偶法 対置法 対句法 逆対句
3【付加】 虚辞 宣誓 誓言 枕詞 序詞 冗語法 慣用重複 強調重複 情化法 接叙法 連辞畳用 挙例法 点描法 詳悉法 列叙法 配分法 ためらい 訂正 換言 抹消表示 詠嘆法
4【省略】 省略法 頭部省略 脱落 主辞内顕 断叙法 連辞省略 連語省略 省筆 情報カット 場面カット 警句法 黙説法 頓絶法 中断法 体言止め 名詞提示 沈黙表示 省略表示
B伝達のレトリック
1【間接】 曲言法 婉曲語法 稀薄法 迂言法 代称 美化法 曖昧語法 緩叙法 反対否定 二重否定 暗示的看過法 陽否陰述 反語法 設疑法 修辞疑問 反用法 逆語法 逆言法 逆力説 偽悪的讃辞 反語的讃辞 反語的緩和 反語的期待 反語的否認 揚げ足取り 皮肉法 冷嘲法 愚弄的皮肉 嘲笑的あてこすり 諷刺 挙隅法 側写法 依他法 修辞的帰納法
2【置換】 比喩法 転義法 指標比喩 直喩法 結合比喩 隠喩法 文脈比喩 諷喩法 寓話 寓言 象徴 カテゴリー間転換 活喩法 有情化 擬人法 招呼法 擬物法 結晶法 カテゴリー内転換 声喩 擬声法 写声法 擬態法 示姿法 提喩法 換称 換喩法
3【多重】 引用法 明示引用 隠引法 金言使用 暗示引用 模擬 模作
パロディー 映原 翻案 本歌取り 縁語 縁装法 類喩 類装法 数装法 添義法 字装法 字喩 交叙法 洒落 重義法 秀句法 雙叙法 掛けことば 駄洒落 詞喩 地口 語路合わせ
4【摩擦】 超格法 訛り 文体落差 重言法 軛語法 兼用法 類形異義近接 代換 転喩 接離法 現写法 張喩 誇張法 過大誇張法 過少誇張法 極言 印象強調 過少言辞 微差拡大 矛盾語法 撞着語法 濫喩 対義結合 同義循環 異例結合 逆説 避板法 外国語混用 直訳体 同語回避 問答法 殊句
大山敏子の『英語修辞法』では、反語は誇張と同じ章に組み入れられており、逆説や撞着語法の章は特に設けられていない点に特色がある(13)。また、表現的な語法違反の説明に最後の一章が割り当てられている点に注意されたい。
「1擬人法personification 2隠喩metaphor 3直喩simile 4迂言法periphrasis婉曲語法euphemism冗語法pleonasm虚辞expletive 5誓言oath 6反復repetition 7平衡balance対照contrast 8反語irony誇張hyperbole緩叙meiosis 9修辞疑問rhetorical question 10換喩metonymy提喩synechdoche重言法hendiadys代換hypallage 11声喩onomatopoeia 12兼用法syllepsis軛語法zeugma 13諺proverbもじり詩文parody駄洒落pun掛詞paronamasia 14語法違反vices of language」
丸谷才一の『文章読本』では、大岡昇平の『野火』一作に絞って、修辞分析がなされており、その中で次のような英語修辞法が解説されている(14)。実際は原語の部分は一般受けを考えてカナになっている。
「隠喩metaphor直喩simile擬人法prosopopoeia迂言法periphrasis 代称Kenning頭韻alliteration畳語法epizeuxis首句反復anaphora結句反復epiphora前辞反復anadiplosis対句antithesis連辞省略asyndeton誇張法hyperbole緩叙法meiosis曲言法litotes修辞的疑問rhetorical question換喩metonymy撞着語法oxymoron声喩onomatopoeia洒落pun等長句parisonもじり詩文parody叙述的直喩descriptive simile強意的直喩Intensifying simile羅列enumeration諺proverb」
W.カイザーの『文学作品の分析と解釈』は、同じドイツ語修辞法の解説書である先のシンチンゲルの辞書にも見られた共感覚が一技法(組成隠喩)として顔を出している(15)。
「類音重畳Annominatio地口・諧謔Witz,Scherzo 異格重畳法Polyptoton引喩Anspielung 迂言法Umschreibung曲言法Litotes反語法Ironie婉曲語法Euphemismus誇張法Hyperbole提喩Synekdoche換喩Metonymie隠喩Metapher濫喩Katachrese 撞着語法Oxymoron対照法Antithese 同義語Synonym並列法Reihung 列挙法Aufzahlung 漸層要素miembros crecientes累積法Haufung 強化Steigerung 連辞省略法Asyndeton漸層法Klimax 平行法Parallelismus 頭語反復法Anapher結句反復法Epipher首語句反復法Epanalepse 交差配列法Chiasmus軛語法Zeugma 直喩Vergleich比喩Gleichnis譬えParabel 隠喩Metapher共感覚Synasthesie」
石井慎二編の『レトリックの本』は、学術書ではないので、間違いも多いが、直解主義など他の著作が挙げていないような用語の解説が時に見られるため、役に立つことがある(16)。
「直喩simile 隠喩metaphor 換喩metonymy 提喩synecdoche 換称antonomasia 擬人法personification誇張法hyperbole緩叙法litotes 列叙法accumulation列挙法enumeration 漸層法climax 引喩allusion諷喩allegory声喩onomatopoeia 代換hypallage転喩transferred epithet交錯的配語法chiasmus 濫喩catachresis くびき語法zeugma撞着語法oxymoron 逆説paradox 暗示的看過法preterition 転置hyperbaton 反語irony 修辞疑問rhetorical question 頓絶法aposiopesis 頭部省略prosiopesis 連辞省略asyndeton 連辞畳用polysyndeton 冗語法pleonasm 重言法hendiadys 婉曲語法euphemism迂言法periphrasis 代称kenning代替metalepsis対句antithesis 逆対句antimetathesis 反復法repetition畳語法epizeuxis復言dilogy前辞反復anadiplosis首句反復anaphora 結句反復epiphora回帰反復epanodos首尾同語epanadilopsis変形反復polyptoton倒置反復antimetabole頭韻法alliteration 同族反復ploce換語epanorthosis 換義antanaclasis 駄洒落pun掛けことばparonomasia 誓言oath虚辞expletive」
P.ディクソンの『修辞』とR.バルトの『旧修辞学』では、前者が英語で書かれ、後者が仏語で書かれている点を除けば、似たような構成をとっている(17)。
「隠喩metaphor 迂言法periphrasis格言maxim箴言maxime掛詞paronomasia換言epanorthosis換喩metonymy 擬人法prosopopeia強勢法emphasis交錯配列chiasmus古語法archaism 誇張法hyperbole 漸層法incrementum詞姿schemes修辞疑問rhetorical question首句反復anaphora声喩onomatopoeia 対照法antithesis 重複reduplication頭韻alliteration 倒置反復antimetabole反語irony反復repetition転義trope諷喩allegory敷衍amplification文彩figure並行体parallelism破格構文anacoluthe母音転換apophonie頓絶法aposiopese拡大叙法auxese濫喩catachrese省略法ellipse 表現法elocutio要約enumeratio付随叙述epidiegesis 寓話fable代換法hypallage活写法hypotypose譬parabole逆言法paralipse迂言法periphrase冗語法perissologie黙説法reticence中断suspension提喩synecdoque縮小叙法tapinose」
佐藤信夫の『レトリック感覚』と『レトリック認識』では、代換やキアスムや擬人・擬物といったいくつかの修辞法は抜けているが、そこでは主要な文彩のかなり操作的な解説がなされている。旧修辞学の行き過ぎた反語・皮肉の下位区分の紹介は注目すべきである(18)。
「直喩comparaison隠喩m師aphore換喩m師onymie提喩synecdoque換称antonomase誇張法hyperbole過大誇張法aux峻e過少誇張法miose,tapinose列叙法accumulation列挙法始um屍ation漸層法aux峻e連鎖漸層法gradation逆漸層法anticlimax緩叙法litote黙説r師icence中断interruption未決suspension ためらいdubitation類義累積synonymie訂正姿anorthose転喩m師alepse対比antith峻e並行体parall四isme同形節反復parison対義結合oxymore 逆説paradoxe 諷喩all使orie 反語ironie反用antiphrase皮肉sarcasme愚弄的皮肉diasyrme嘲笑的あてこすりmyct屍isme反語的讃辞四evation反語的緩和charientisme 反語的期待confision反語的否認apophase偽悪的讃辞ast司sme暗示引用allusion模擬imitationもじり詩文parodie模作pastiche」
『ラルース言語学用語辞典』の文彩の項目には、古典修辞学を整理した次のような独自の分類がなされていて、異彩を放っている(19)。
「1【思考の文彩】 表現とは別ものの思考のある種のありかた。擬人法など。
2【意味の文彩】 語の意味の変化に関係。隠喩・換喩・提喩など。
3【表現の文彩】 語群と文についての意味の変化に関連。曲言法・反語など。
4【語法の文彩】 語形の物理的な変化法。語頭(中)音添加・語尾音省略など。
5【構文の文彩】 自然な語順に関連。倒置・同格・省略など。
6【表現法の文彩】 思考の表現に適合する語の選択に関係。連辞省略・頭韻法
7【文体の文彩】 いくつもの観念の間の関係の表現に関連。列挙法・対照法」
最後に中国語の修辞法にはどんなものがあるか、以下に示そう(20)。隠喩が結合比喩的隠喩と文脈比喩的隠喩とに分かれている点は示唆的である。指標比喩とともに、結合比喩と文脈比喩は中村明の造語である(21)。また、対句などは中国から来ているように思われるが、表現形式の対比である「対偶」と意味内容の対比である「対比」とは、やはり中国でも分けられている。そのほか、反語の意味では「反問」が使われるなど、ある程度のずれに注意されたい。漱石の『草枕』などによく出てくる前辞反復、俗に言うしりとり文が中国語の修辞法にも見られることは興味深い(22)。
「1 比喩:1)明喩(=直喩・指標比喩) 2)暗喩(=結合比喩的隠喩) 3)借喩(=文脈比喩的隠喩) 2 借代(=換喩・提喩) 3 比擬(=擬人・擬物法) 4 誇張(=誇張法) 5 対偶(=対句) 6 対比(=対照法) 7 排比(=列叙法) 8 反復(=反復法) 9 双関(=掛詞)10 設問(=問答法)11 反問(=反語法)12 反語(=諷刺・皮肉)13 引用(=引喩)14 婉轉 (=婉曲語法)15 襯托(=対義結合) 16 頂針(=前辞反復)」
結局、ああも言えるこうも言えるという実際の言述を、一つの修辞法の枠に当てはめるところに無理があるのではないか。これまで作家の文体だと言われてきたものは、実は、特定の修辞法の愛用の他に、各種修辞法の組合せであって、その配列の違いが作家の独創性を形づくるのではないか。そんな仮説が脳裏をよぎる。こうして、われわれは次のようにおおまかな定義づけを行うことができる。広義において文学とは言語の特別な使用であり、狭義において文体とは修辞法の特別な使用である、と。佐藤信夫も書いている。「文学とはすぐれたことばづかいのことである。と言ってみると、なにやら誇張のように聞こえるけれど、じっさい、古来のすぐれた作品を次々に思い浮かべてみれば、すべてそうだったと思いあたるはずである。近いところでは漱石ひとりの名まえをあげるだけでも合点がいくだろう。」(23)
註
(1) Heinrich Lausberg,Handbuch der Literarischen Rhetorik,F.Steiner,Stuttgart,1990
(2) R.バルト『旧修辞学』みすず書房1979, p.146
(3) 金田一春彦編『日本語百科大事典』大修館書店1988,pp.869-870
(4) 五十嵐力『新文章講話』早稲田大学出版部1909
(5) 速水博司『近代日本修辞学史』有朋堂1988, pp.240-251
(6) 中村明『日本語レトリックの体系』岩波書店1991
(7) 拙著『レトリックからコントラストへ』駿河台出版社1985,pp.1-5
(8) P. Fontanier,Les figures du discours,Flammarion,1968
(9) グループμ『一般修辞学』大修館書店1981
(10) R.シンチンゲル編『現代独和辞典』三修社1979,pp.1290-1294
(11) 五十嵐力『新文章講話』早稲田大学出版部1909
(12) 中村明『日本語レトリックの体系』岩波書店1991
(13) 大山敏子『英語修辞法』篠崎書林1956
(14) 丸谷才一『文章読本』中央公論社1977
(15) W.カイザー『文学作品の分析と解釈』創樹社1984
(16) 石井慎二編『レトリックの本』JICC出版局1981
(17) P.ディクソン『修辞』研究社1975 ,R.バルト『旧修辞学』みすず書房1979
(18) 佐藤信夫『レトリック感覚』講談社1978,『レトリック認識』講談社1981
(19) J.デュボワ編『ラルース言語学用語辞典』大修館書店1980,pp.6-7
(20) 相原茂編『改訂版中国語学習ハンドブック』大修館書店1996,pp.130-131
(21) 中村明『比喩表現の理論と分類』秀英出版1977
(22) 「何ですか」と男は二の句を継いだ。継がねば折角の呼吸が合わぬ。呼吸が合わねば不安である」(夏目漱石『虞美人草』)
(23) 佐藤信夫「解説」『新釈遠野物語・藪原検校』新潮社1981,pp.398-399