1989(平成元年)年

「幼稚園教育要領」

第1章 総則 1 幼稚園教育の基本 2 幼稚園教育の目標 3 幼稚園教育の編成
第2章 ねらい及び内容 健康 人間関係 環境 言葉 表現
第3章 指導計画上の留意事項

第1章 総則

1 幼稚園教育の基本
 幼稚園教育は、幼児期の特性を踏まえ環境を通して行うものであることを基本とする。このため、教師は幼児との信頼関係を十分に築き、幼児と共によりよい教育環境を創造するように努めるものとする。これらを踏まえ、次に示す事項を重視して教育を行わなければならない。
(1)幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮することにより発達に必要な体験を得ていくものであることを考慮して、幼児の主体的な活動を促し幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること。
(2)幼児の自発的な活動としての遊びは、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮して、遊びを通して指導を中心として第2章に示すねらいが総合的に達成されるようにすること。
(3)幼児の発達は、心身の諸側面が相互に関連し合い多様な経過をたどって成し遂げられていくものであること、また幼児の生活経験がそれぞれ異なることなどを考慮して、幼児一人一人の特性に応じ発達の課題に即した指導を行うようにすること。

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2 幼稚園教育の目標
 幼稚園は、幼児期が生涯にわたる人間形成の基礎を培う時期であることを踏まえ、幼稚園教育の基本に基づいて展開される幼稚園生活を通して、幼稚園教育の目標の達成に努めなければならない。
 (1)健康、安全で幸福な生活のための基本的な生活習慣・態度を育て、健全な心身の基礎を培うようにすること。
 (2)人への愛情や信頼感を育て、自立と協同の態度及び道徳性の芽生えを培うようにすること。
 (3)自然などの身近な事象への興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うようにすること。
 (4)日常生活の中で言葉への興味や関心を育て、喜んで話したり聞いたりする態度や言葉に対する感覚を養うようにすること。
 (5)多様な体験を通じて豊かな感性を育て、創造性を豊かにするようにすること。

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3 教育課程の編成
 幼稚園においては、法令及びこの幼稚園教育要領の示すところに従い、幼児の心身の発達と幼稚園及び地域の実態に即応した適切な教育課程を編成するものとする。
 (1)幼稚園生活の全体を通して第2章に示すねらいが総合的に達成されるよう、教育機関や幼児の生活経験や発達の過程などを考慮して具体的なねらいと内容を組織しなければならないこと。この場合においては、入園から修了に至るまでの長期的な視野をもって充実した生活が展開できるように配慮しなければならないこと。
 (2)幼稚園の毎学年の教育週数は、特別の事情のある場合を除き39週を下ってはならないこと。
 (3)幼稚園の1日の教育時間は、4時間を標準とすること。ただし、幼児の心身の発達の程度や季節などに適切に配慮すること。

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第2章 ねらい及び内容
 この章に示すねらいは幼稚園修了までに育つことが期待される心情、意欲、態度などであり、内容はねらいを達成するために指導する事項である。これらを幼児の発達の側面から、心身の健康に関する領域「健康」、人とのかかわりに関する領域「人間関係」、身近な環境とのかかわりに関する領域「環境」、言葉の獲得に関する領域「言葉」及び感性と表現に関する領域「表現」としてまとめ、示したものである。
各領域に示すねらいは幼稚園における生活の全体を通じ幼児が様々な体験を積み重ねる中で相互に関連をもちながら次第に達成に向かうものであること、内容は具体的な活動を通して総合的に指導されるものであることに留意しなければならない。なお、特に必要な場合には、各領域に示すねらいの趣旨に基づいて適切な具体的な内容を工夫しそれを加えても差し支えないが、その場合にはそれが幼稚園教育の基本を逸脱しないよう慎重に配慮する必要がある。

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健 康
この領域は、健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う観点から示したものである。
1 ねらい
 (1)明るく伸び伸びと行動し充実感を味わう。
 (2)自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
 (3)健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付ける。
2 内容
 (1)先生や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
 (2)いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
 (3)進んで戸外で遊ぶ。
 (4)様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
 (5)健康な生活のリズムを身に付ける。
 (6)身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄など生活に必要な活動を自分でする。
 (7)幼稚園における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整える。
 (8)自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
 (9)危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。
3 留意事項
 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 (1)心と体の健康は相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、幼児が教師や他の幼児との温かい触れ合いの中で自己の存在や充実感を味わうことなどを基盤として、心と体の健全な発達を促すこと。
(2)生活の中で興味や関心、能力に応じて全身を使って様々な活動に取り組むことにより、体を動かすことの楽しさを味わい自分の体を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。その際、幼児の生活と遊離した特定の運動に偏った指導を行うことのないようにすること。

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人間関係
 この領域は、他の人々と親しみ支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力を養う観点から示したものである。
1 ねらい
 (1)幼稚園生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
 (2)進んで身近な人とかかわり、愛情や信頼感をもつ。
 (3)社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
2 内容
 (1)喜んで登園し、先生や友達に親しむ。
 (2)自分で考え、自分で行動する。
 (3)自分でできることは自分でする。
 (4)友達と積極的にかかわりながら喜びや悲しみを共感し合う。
 (5)自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
 (6)友達と一緒に遊びや仕事を進める楽しさを知る。
 (7)友達とのかかわりの中で言ってはいけないことやしてはいけないことがあることに気付く。
 (8)友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付く。
 (9)共同の遊具や用具を大切にし、みんなで使う。
 (10)自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
3 留意事項
 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 (1)教師との信頼関係に支えられて自分自身の生活を確立していくことが人とかかわる基盤となることを考慮し、幼児が自ら周囲に働きかけることにより多様な感情を体験し、試行錯誤しながら自分の力で行うことの充実感を味わうことができるよう、幼児の行動を見守りながら適切な援助を行うようにすること。
 (2)集団生活の中で十分に他の幼児や身近な人々と触れ合い自分の感情や意志を表現しながら共に楽しみ共感し合う体験を通して、人とかかわることの楽しさや大切さを味わうことができるようにすること。また、生活を通して親の愛情に気付き、親を大切にしようとする気持ちが育つようにすること。

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環境
 この領域は、自然や社会の事象などの身近な環境に積極的にかかわる力を育て、生活に取り入れていこうとする態度を養う観点から示したものである。
1 ねらい
 (1)身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ。
 (2)身近な環境に自分からかかわり、それを生活に取り入れ大切にしようとする。
 (3)身近な事象を見たり考えたり扱ったりする中で、物の性質や数量などに対する感覚を豊かにする。
2 内容
 (1)自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。
 (2)季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
 (3)自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。
 (4)身近な動植物に親しみをもって接し、いたわったり大切にしたりする。
 (5)身近な物を大切にする。
 (6)身近な物を使って考えたり試したりするなどして遊ぶ。
 (7)遊具や用具の仕組みに関心をもつ。
 (8)日常生活の中で数量や図形などに関心を持つ。
 (9)生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心を持つ。
 (10)幼稚園内外の行事において国旗に親しむ。
3 留意事項
 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 (1)身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い共感し合うことなどを通して自分からかかわろうとする意欲を育てるとともに様々なかかわり方を通してそれらに対する親しみや畏敬の念、生命を大切にする気持ち、公共心、探求心などが養われるようにすること。
 (2)数量などに関しては、日常生活の中で幼児自身の必要感に基づく体験を大切にし、数量などに関する興味や関心、感覚が無理なく養われるようにすること。

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言葉
 この領域は、経験したことや考えたことなどを話し言葉を使って表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚を養う観点から示したものである。
1 ねらい
 (1)自分の気持ちを言葉で表現し、伝え合う喜びを味わう。
 (2)人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話そうとする。
 (3)日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、想像力を豊かにする。
2 内容
 (1)先生や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり話したりする。
 (2)したこと、見たこと、聞いたこと、感じたことなどを自分なりに言葉で表現する。
 (3)したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
 (4)人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
 (5)生活の中で必要な言葉が分かり使う。
 (6)親しみをもって日常のあいさつをする。
 (7)生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
 (8)いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
 (9)絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き想像する楽しさを味わう。
 (10)日常生活に必要な簡単な標識や文字などに関心をもつ。
3 留意事項
 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 (1)教師や他の幼児とのかかわりの中で互いに自分の感情や考えを伝え合う喜びを十分に味わうとともに、日常生活の中での出来事、絵本や物語などに数多く出会い豊かなイメージをもつことができるようにすること。この場合、教師の使う言葉の影響が大きいことに留意すること。
 (2)文字に関する系統的な指導は小学校から行われるものであるので、幼稚園においては直接取り上げて指導するのではなく個々の幼児の文字に対する興味や関心、感覚が無理なく養われるようにすること。

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表現
この領域は、豊かな感性を育て、感じたことや考えたことを表現する意欲を養い、創造性を豊かにする観点から示したものである。
1 ねらい
 (1)いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
 (2)感じたことや考えたことを様々な方法で表現しようとする。
 (3)生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。
2 内容
 (1)生活の中で様々な音、色、形、手触り、動きなどに気付いたり楽しんだりする。
 (2)生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。
 (3)様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
 (4)感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり自由にかいたりつくったりする。
   (5)いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。
 (6)音楽に親しみ、歌を歌ったり簡単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう。
 (7)かいたりつくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり飾ったりする。
 (8)自分のイメージを動きや言葉などで表現し、演じて遊ぶ楽しさを味わう。
3 留意事項
 上記の取扱いに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 (1)豊かな感性は、日常の中で美しいもの、優れたもの、心に残るような出来事などに出会い、そこから得た感動を他の幼児や教師と共有し様々に表現することなどを通して養われるようにする。
 (2)生活経験や発達に応じ、自ら様々な表現を楽しみ表現する意欲を十分に発揮させることができるような材料や用具などを適切に整えること。
 (3)幼児が自分の気持ちや考えを素朴に表現することを大切にし、生活と遊離した特定の技能を身に付けさせるための偏った指導を行うことのないようにすること。

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第3章 指導計画作成上の留意事項
 幼稚園教育は、幼児が自ら意欲をもって環境とかかわることによりつくり出される具体的な活動を通して、その目標の達成を図るものである。幼稚園においてはこのことを踏まえ、幼児期にふさわしい生活が展開され適切な指導が行われるよう、次の事項に留意して調和のとれた組織的、発展的な指導計画を作成しなければならない。
1 一般的な留意事項
 (1)指導計画は、幼児の発達に即して一人一人の幼児が幼児期にふさわしい生活を展開し必要な体験を得られるようにするために、具体的に作成すること。
 (2)指導計画作成に当たっては、次に示すところにより、具体的なねらい及び内容を明確に設定し、適切な環境を構成することなどにより活動が選択・展開されるようにすること。
  @ 具体的なねらい及び内容は、幼稚園生活における幼児の発達の過程を見通し、幼児の生活の連続性、季節の変化などを考慮して、幼児の興味や関心、発達の実情などに応じて設定すること。
  A 環境は具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように構成し、幼児が自らその環境にかかわることにより様々な活動を展開しつつ必要な体験を得られるようにすること。その際、幼児の生活する姿や発想を大切にし、常にその環境が適切なものとなるようにすること。
  B幼児の行う具体的な活動は、生活の流れの中で様々に変化するものであることに留意し、幼児が望ましい方向に向かって自ら活動を展開していくことができるよう必要な援助をすること。
 (3)幼児の生活は、入園当初の一人一人の遊びや教師との触れ合いを通して幼稚園生活に親しみ安定していく時期から、やがて友達同士で目的をもって幼稚園生活を展開し深めていく時期などに至るまでの過程を様々に経ながら広げられていくものであることを考慮し、活動がそれぞれの時期にふさわしく展開されるようにすること。
 (4)幼児の行う活動は、個人、グループ、学級全体などで多様に展開されるものであるが、いずれの場合にも、一人一人の幼児が興味や欲求を十分に満足させるよう適切な援助を行うようにすること。
 (5)幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会を通じて次第に広がりをもつものであることに留意し、家庭との連携を十分図るなど、幼稚園における生活が家庭や地域社会と連続性を保ちつつ展開されるようにすること。
 (6)長期的に発達を見通した年、期、月などにわたる指導計画や、これとの関連を保ちながらより具体的な幼児の生活に即した週、日などの指導計画を作成し、適切な指導が行われるようにすること。特に、週、日などの指導計画については、幼児の生活のリズムに配慮し、幼児の意識や興味の連続性のある活動が相互に関連して幼稚園生活の自然な流れの中に組み込まれるようにすること。
 (7)幼児の実態及び幼児を取り巻く状況の変化などに即して指導の過程についての反省や評価を適切に行い、常に指導計画の改善を図ること。
2 特に留意する事項
 (1)基本的な生活習慣の形成に当たっては、幼児の自立心を育て、他の幼児とかかわりながら活動を展開する中で生活に必要な習慣を身に付けるよう援助すること。
 (2)道徳性の芽生えを培うに当たっては、基本的な生活習慣の形成を図るとともに、幼児が他の幼児とのかかわりの中で他人の存在に気付き相手を尊重する気持ちで行動できるようにし、また、自然や身近な動植物に親しむことなどを通して豊かな心情が育つようにすること。
 (3)思考力の芽生えを培うに当たっては、遊びを通して気付いたり試したりする直接的な体験の中で知的好奇心を育て、次第によく見よく聞きよく考える意欲や態度を身に付けるようにすること。
 (4)安全に関する指導に当たっては、情緒の安定を図り、遊びを通して状況に応じて機敏に自分の体を動かすことができるようにするとともに、危険な場所や事物などが分かり安全についての理解を深めるようにすること。また、交通安全の習慣を身に付けるようにするとともに、災害時に適切な行動がとれるようにするための訓練なども行うようにすること。
 (5)心身に障害のある幼児の指導に当たっては、家庭及び専門機関との連携を図りながら、集団の中で生活することを通して全体的な発達を促すとともに、障害の種類、程度に応じて適切に配慮すること。
 (6)行事の指導に当たっては、幼稚園生活の自然な流れの中で生活に変化や潤いを与え、幼児が主体的に楽しく活動できるようにすること。なお、それぞれの行事についてはその教育的価値を十分検討し適切なものを精選し幼児の負担にならないようにすること。

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