ドナ・ウィリアムズ著 「自閉症だった私へ」「こころという名の贈り物」
(河野万里子訳) 新潮社
自閉症児・者の「心の世界」についての論議は、最近になって特に注目されるようになりました。その結果、彼らの外見でのとても単純に見える行動や、あどけない表情の裏側には、外見とはまったく異なったとても複雑で繊細な心の世界が広がっていることが、多くの研究によって明らかにされつつあります。
この「自閉症だった私へ」は、著者自身が自閉症であるドナの幼い頃から現在までの心の様子が実に見事に描かれています。自閉症児・者によく見られる特有なコミュニケーションや自己刺激的な行動、(心の世界に反して)外的世界への過敏な反応などには、そうせざるを得ない理由があり、それによって生じる混乱や苦痛、恐怖などといったものがどれ程のものなのかを、生き生きと且つ強烈に私たちに伝えてくれます。また、このような自閉症児・者の言葉や反応がいかに重要な意味を持っているかということを示しているようにも思います。
次に、続編での「こころという名の贈り物」では、ドナの心の中の二人の人間に別れを告げ自分を取り戻し、自閉症を克服するまでの心の様子や克服する方法などが書かれています。その中で、自分(ドナ)の心の世界から私たちの世界へ少しずつ歩み寄り、心を開こうと努力する姿は私を圧倒させるものでした。続編の最後の章の中でドナが「私は自閉症と戦うことができるのだ。自閉症をコントロールすることができるのだ。自閉症が私をコントロールすることができるのではない。」と述べた言葉の中には、自閉症児・者そして私たちに「希望」という二文字を与えてくれることを示唆しているように感じます。
最後に、もう既に読まれた方も多いかとは思いますが、まだ読まれていない方は是非一読されてみてはいかがでしょうか。・・・もしかしたらそこには、自閉症児・者の心の扉の鍵が・・・隠されているかも知れません。
(静岡大学教育学部杉山研究室 T・N)