Temple Grandin & Margaret M. Scariano著 学習研究社刊
「我,自閉症に生まれて(Emergence Labelede Autistic)」
本書の著者であるテンプル・グランディンは子どもの頃に精神科医より自閉症の診断を下された女性である.彼女の子ども時代は,他の多くの自閉症児と同様にことばの問題,コミュニケーションに問題をもち,そして長い人生にわたってこだわりとそこから派生した恐怖症などに周囲も,本人も悩んできた.
このような背景をもつ著者のテンプルであるが,彼女はその道でかなり著名な家畜扱い機具の設計士という顔をもっている.しかし彼女はどのような道を経て今の職業をもつに至ったのだろうか?
自閉症の中には他者に触れられることを苦手とするものがしばしばみられる.著者もこの点を苦手としているのだが,同時に相反するもう一つの気もち〜肌のふれあいを求める気もちが存在していた.このふれあいの感覚を適切に,自身でコントロールできるモ機械モを小学校2年生の時から夢み,高校時代にウシにワクチンを打ったりするためにウシの体をピッチリと固定する「牛樋」という触覚刺激を適切にコントロールできる機械に出逢う.そして大学ではこの牛樋を人に用いて心理学的な実験を行い,また牛樋に改良を加えたりする.そして本物のウシに対しても牛樋をとおしてかかわり,大学院(心理学,後に動物科学に転部)在学中には牛樋機具会社のパートを行った.そこで屠殺に触れる.その際繊細な感覚をもつ彼女が体験したことは「動物が苦しむことなく,より威厳をもって死ねる配慮を」という慈悲心に満ちたものであった.
彼女の内からわき出た探求心,それは未知なる自分自身を探求してきたように感じられるものであり,充実した社会生活を感じられるに至った.
(名古屋大学大学院教育学研究科 中西 和紀)