******辻井の個人的なノート;;;;学習障害の診断についてですが、国際的な診断基準における学習障害(例えば,DSM-4でのLearning Disorders)という用語の用いられ方と、日本のなかでの用いられ方とで大きく異なるところがあります。本来、国際的な基準でも学習障害というのは学習のなかでの基本的な成分である読み、書き、計算において特異的な大きな問題点を示しているものです。従って、学齢期以前に学習障害の診断はできませんし、そのようなことをしても意味がありません。また、診断は症状から規定されるべきで、知能検査のプロフィールから決めていくことではありません。従って、そういう学習の特異的な問題をもつ子どもというのは典型的な子どもは驚くほど少数です。何らかの診断名をつけるという場合には、特に子どもの発達の問題と絡んでいる場合には、発達経路のなかで一貫して前面に浮び上がってくる問題は何か、そして現在、特に困っている問題は何か、子どもに対する治療教育としてともかくどういう側面から取り組むかといったことでの区別をつけるためにおこなうことだと思います。最近、メールで問い合わせが良くあるのは、幼児期に自閉症と言われて、別のところでは学習障害と言われるような方です。自閉症は基本的に社会性と対人関係面(コミュニケーション)での発達の偏りを示すもので、このなかで能力が高ければ成長してきて多少の癖(こだわり)は残っても目立たない状態になっていき、高機能広汎性発達障害(高機能自閉症、あるいは自閉症の診断基準は満たさないがしたそうした傾向を有していた子どもで対人関係・社会性の問題を示すアスペルガー症候群)と呼ばれるの子どもたちがいます。こうした子どもたちのなかに、自閉症の子どもの多くが明らかな認知障害を有するため、学齢期にはいり学習の問題を示す場合もあります。この場合に学習障害という呼び名を用いることもできるかもしれませんが、学習面(academic skills)での治療教育の実感からいうと方法論が異なるように思いますし、より長期的に思春期以降の適応を考えた場合にかなり様相が異なります。確かに環境条件に恵まれない(狭義の)学習障害の場合に多動性を強くもつと(注意欠陥多動症候群)、衝動統制や攻撃性のコントロールの悪さと学習の出来なさが相俟って学校生活での適応を悪くしたり、そうしたなかで長期にわたる深刻な問題を示す子どももいなくはないが、普通の環境条件に恵まれて学習上での問題に気付かれ治療教育にのってきた子どもたちは「勉強」としての学習がある間は苦労しますが、それ以降の問題はより少ないように思います。その点、むしろ高機能広汎性発達障害の方が深刻で、青年期以降、就職などについても大きな問題を示している者が多くいます。高機能広汎性発達障害の場合、長期間にわたる治療教育プログラムのなかで抱えていくことが必要です。これら軽度発達障害そのものを学習障害として捉えていく視点だと、あくまでも「学習」の問題を中核にしてしまうために子どもたちの治療教育の中心を見誤る危険性があります。一体、社会性の学習障害とは何を意味するのでしょうか? 私には理解できません。私たちのところに来ている子どもたちのなかにも、私たちのところに来る以前に社会性の学習障害と言われた子どもたちがいます。或る子どもは(アスペルガー症候群ですが)、公立中学の定期試験で学年全体の3番だったといいます。学習に問題がない子どもに学習障害という診断をつけて何の意味があるのでしょう。むしろ対人関係や社会性の発達の問題をもつ子どもとして自閉スペクトルのなかで考えていくことの方が自然だと思います。実際、学習障害と診断された子どもたちのなかに実は高機能広汎性発達障害の子どもが本当にたくさんいます。「学習障害」の本に取り上げられている症例にも含まれていたりします!!! 何でも学習障害ではなく、問題の質をしっかり見据えて治療教育に取り組むことが必要だと思います。