森口奈緒美著 「変光星 〜ある自閉症者の少女期の回想」 飛鳥新社
星の明るさは不変ですが、中にはごく少数明るさが変化する恒星があるそうです。「変光星」とは、そんなちょっと変わった星のことを言います。著者である森口奈緒美さんは、幼い頃から集団の中にいるとうまくいかない、周囲に合わせようと頑張っているのに「変」と言われてしまう自分を、宇宙の変光星に見立てています。
個性より協調性が重視される画一性教育の中で、自分の世界を守って生きていくのは大変なことのようです。他者の意図が読みとりにくいために刺激に過敏に反応してしまう、興味の対象が同年代の子どもたちと異なるために友だちができにくい、能力的には問題がないので「わがまま」「しつけが悪い」と教師に誤解される・・・。トラブルが積み重なって、集団は彼女にとって不可解で恐ろしいものになっていきます。小・中学校時代をいじめのターゲットとして過ごした森口さんは、「死ね!」と言われてもそれを「shine」とローマ字にし、さらに英語読みに換えて、「輝け!」と言われているのだと思って耐えたと言います。このマイナスをプラスに変えていくエネルギーや発想の豊かさを、適切に評価し引き出せる環境があったら、と思わずにはいられません。森口さんは、美術や音楽に優れた才能を持ち、努力家で、正直で、ユーモアもあるとてもすてきな女性です。
このような面は、私が関わってきたアスペの会の子どもたちにも共通しているように思います。多数派の普通を押しつけることでせっかくの長所をつぶしてしまうのではなく、違いを認めた上で良い面に目を向け、お互いに尊重しあえる関係を作っていきたいものです。
この本は、アスペルガーの子どもたちに勇気を与え、周囲の人々が彼らの悩みや精神世界を理解していく助けになることと思います。そして、アスペの会の子どもたちにも、個性を生かせる自己表現の場を見いだして「輝く変光星」になってもらいたい、と願っています。
(名古屋大学教育学部心理教育相談室 林 綾子)